渋川流柔術/小佐野淳/渋川流柔術師範・谷田朝雄/地元で誰も顧みない柔術を後世に伝えることができるのはこの上もない光栄である・技術解説

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渋川流柔術/小佐野淳/渋川流柔術師範・谷田朝雄/地元で誰も顧みない柔術を後世に伝えることができるのはこの上もない光栄である・技術解説

平成5年 126P 部数は少なそうです。資料用にもいかがでしょうか。

武術の真意 ―まえがきにかえて― 武術は殺人技術ではあるが、無抵抗な者への施術や無意味な闘争は恥辱とされている。先手必勝というのは、敵が 殺意を抱いたときに敵の攻撃に遅れをとるなという教えであり、常に自分の意の通りに動けという教えである。何も しない者に手を出すのは武術ではなく暴力である。

江戸時代の武術はその実用性を失ったのは確かであるが、武士として平戦両用の心構えは長く継続された。その武 術は敵の動作に対していかに合理的に身体を運用して勝ちを得るかを教えるものであり、武士にとっては最も大切な 体育かつ教養であった。全国の藩校に武術の稽古場が常備されていたのは、武術が武士の教育にとって重要な部分を 占めていたからに外ならない。

「武術にはスポーツ的・ゲーム的要素はない。武術は精神生活を高揚させるとともに、人間いかに生きるかを教える 行動哲学である。武術に失敗は許されない。負けは死である。それだけに日常の稽古は真剣である。

武術の攻防は形として表現され、それは修行年数を重ねるに従って妙味を増し、衰えることがない。古武術は生涯 現役である。
浅山一伝流の調査を進める中で、広島県坂町に伝えられる渋川流柔術に出合った。聞けば誰も稽古をする者がない という。半ば伝承の使命感に燃えての通い稽古であったが、何とか絶伝の危機を免れほっと胸を撫で下ろしている今 日この頃である。一度消えてしまったものは、二度と甦ることはない。武術は人の手から手へ直接伝えられていくも のなのである。

最後になりましたが、渋川流柔術の技法を快く、しかも懇切丁寧に御教授下さった谷田・畝両師範には改めて感謝 の気持ちを表したいと思います。そして、訪坂の際には毎度のように呉市在住の浜田恒男先生にお世話になりました。 心から御礼申し上げます。
著者 識

渋川流柔術師範 谷田朝雄
このたび、私の唯一の門人である山梨県在住の小佐野淳先生が渋川流柔術の解説書を出版された。 私限りで坂町伝統の渋川流は滅びるだろうと、長い間稽古もせずにいたことを思うと、正に快挙とい えよう。

- 私の父重一は、宮田友吉国嗣と小末繁太郎国時の二人の師範に師事して免許皆伝を受け、大正から 昭和の戦前にかけて近郷の青年に渋川流を教えていた。私も弟たちと共にその技と心を学び、昭和十 二年三月に免許皆伝を受けた。戦後しばらくは戦前に修行した人たちの間で稽古が行われていたが、 近年は全く忘れ去られ、絶伝も時間の問題となっていた。

「そんなある日、一本のが入った。「浅山一伝流を研究している者です。坂町にはその棒術が残っ ているそうですが、現状はどうですか」と聞くので、修行した技のことを話し、伝書を送って見せる と、その年の夏に遠い山梨から訪ねてきた。浅山流の棒術を教えてくれという。それが小佐野先生で
ある。

もうだめだと思っていた流儀が後世に残るかもしれない。そう思うと、それからは老骨も顧みず、 度々訪ねて来る小佐野先生に渋川流柔術の全技法を併せて相伝し、昭和六十一年八月付けで免許皆伝 を授けるに至った。
「地元で誰も顧みない柔術を遠い山梨県の小佐野先生のご尽力で、後世に伝えることができるのは、 この上もない光栄である。出版に際し心よりお祝いと感謝を申し上げ、序文とする。


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